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ショーバン先生メモ乱ダム  ―山口昌伴
by douguology_news


舞録番外・緊急報告「山口昌伴:一身上の都合」

〔二つの致命癌を発見、延命生活に入る〕
 山口昌伴、背広にネクタイ、公式立場では山口まさとも先生と呼ぶ(道具学叢書002『首から上の道具学』山口昌伴著、ラトルズ刊による)。
 現:道具学会第7期会長・任期08.4月~10.3月(自称やむなく会長)の第2年目の頭初09年4月、標題の舞録(ブログ)制作に集中のさなか、ふと頸部に異状を触覚したため、緊急検査したところ、二つの体内自爆テロ組織―致命癌組織を発見せり。

体内自爆テロ組織体A
 原発不明癌組織のリンパ腺に広く移転散兵線を形成。これが触診した異形の正体であった。
 自爆テロ組織Aは抗癌剤により弱体化をはかるも体力との持久戦となり、制圧・圧勝の見込はなく、延命戦による有効余命が勝負となる。
 山口まさとも先生、ショーバン君(ふだん着のときの呼称)ともに、道具学擁立のベーシック・ワークをライフワークとし、余命の有効化をはかるのでご協力をいただきたい(あえて一身上の事情を公開する理由である)。

体内自爆テロ組織体B
 巨大肝臓癌、自爆テロAの確認にあわせて発見せるもの。肝臓に寄生増殖した直径100mmの野球ボール大に増殖した癌組織体群。
 この自爆テロ組織体Bは、すでに一触即発の危険状態にあり、今回の発見がなければ半年以内に破裂、大量失血による突然死が予定されていた。
 たとえば09年秋のある日、山口講演中に突如倒れ、意識不明のまま二日後に逝去。病名はただ肝臓癌。口ぐちに「あんまり、突然でしたなぁ」の一語ゆき交うのみ、がオチであったと思われる。

〔二つの致命癌、延命の技術と仁術を癌研(がんけん)に託す〕
 この二つの致命癌認証までは日大病院で到達したが、A癌の制圧は至難、B癌も難攻きわまるため、山口の申し出により「医の道具学」の現在の頂点を極める癌研究会有明病院(5~2年前に大塚がんセンターを移転完了)に一切を託すべく、日大病院より委任状と合わせて患者(山口さん)を回送。
 まずは一触即発お陀仏状況にあった自爆テロ暴発寸前の肝臓巨大癌群を制圧、そのうえで頸頭転移癌群制圧の手順となった。
 野球ボール大の巨大癌群の制圧、壊死、崩落、絶滅への施術、現代医療先端技術と担当医の仁術・忍術の駆使は、まさに「医の道具学」の現在の頂点を極めた。
 曲がりくねって迷走する大動脈から支脈への探索は、すべて鮮明な電子画像を追って展開され、自爆テロ集落を次々を攻めあげ、4時間、240分のうちに全部自滅に追い込んでいった。
 その巨大(直径100mm)の壊死塊の体内処理―壊死体の排出やガス発生の消化に、本体(私)のほうも相当の戦いが必要であり、20日間にわたる高熱の日々が続いた。

〔ここに一命をとりとめ、めでたく退院〕
 自爆テロ組織体壊滅の施術は6月15日午後に行われ、体内自浄処理に20日間を要したが、結果、肝臓癌異常増殖塊は全滅、再発の怖れのない壊滅成功により「一命をとりとめ」て、7月5日に退院となった。

〔とりとめた一命をもとに、もうひとつの挑戦へ〕
 先述のとおり、この秋には突然の逝去の予定にあったわが身、頸元の異形に気づいたためにとりとめた一命。こんどはその一命をもとに、自爆テロ組織A・頸頭部リンパ腺転移癌との延命の戦いが展開される。勝負はつかないようだが、戦いの余白に生甲斐、仕事甲斐に使える「時」がありそうだ。

 ときに山口さん、当年とって72歳。70歳の誕生日以降、将来の余命を考えないでもなかったし、思わぬときにポックリ、もありうるとは思っていた(それが09年仲秋の頃に予定されていたとはつゆ知らず)。
 だが、この4月21日、二つの致命癌を抱いていると知らされ、一命をとりとめて本格的延命の戦いに踏みこむこととなって、それまでの余命への構えの甘さに、心あらたまる思いをしている。
 何をボヤボヤと、いいかげんに生きさらばえとるんかと、天からドヤされた思いであった。かえって余命いくばくもないと知らされて、その余命の有効化に遇進すべき心の構えをあらたにさせられた。
 これは、有限という意味では残念だが、有効化という意味ではかえってトクをした気分でもある。

〔こんなわたしの言えた柄ではないが〕
 皆さん、もうしこし身体に気をくばって、寿命の限界の早期発見をおすすめする。私の場合、医者とのおしゃべりはしたくないほうである。幼いとき体験したことのある「扁桃腺の腫れ」なんか口にしない筈の私が、つい「おしゃべり」して、今回の発見が始まった。あのとき、私が口に出さなければ、いまも秋までの余生を楽しんでいたことになった筈であった。きわどかった余命と、九死に一生を得た退院の日に、つくづく思っている私、である。
# by douguology_news | 2009-07-14 12:07 | 舞録番外・緊急報告

玉手箱とパンドラの箱

 『Better Strage』誌が送られてきた。日本ファイリング(株)の季刊広報誌。
 日本ファイリングは図書館の書庫や物流倉庫のラックシステムなど、大量多種のモノを仕舞ったりとり出したりする収納什器を製造している大道具メーカーである。
 ショーバン先生は表紙(表1)と裏表紙(表4)で連載を続けている。
 [仕舞う]収納の道具文化誌─道具学会理事・山口昌伴。
 ショーバン先生のおお真面目に取り組んでいる学術エッセイである。
 今回(2006.No1号)第15回は「錠前と封緘」(じょうまえとふうかん)。
 表紙(写真1)は奈良市の春日大社宝蔵の閂錠に組紐の封緘を結んだもの。本来は封緘だけで充分の「あけてはいけない」掟の力を発揮できたのだが、時代が降るとその威力を理解できない輩(やから)が気楽に紐を解く怖れが出てきたので一応閂錠を付け足したのである。
 宝蔵でも正倉院の方は白紙を折った封緘で結ってあり、勅封だからそれだけで済ませている(筈である)。
 この、論旨にぴったりの撮影対象を見つけ出したミュー編集事務所の力量にショーバン先生は感動し、感銘している。じつはショーバン先生は正倉院の勅封に相当する写真を撮ってほしい、と要求しただけ。それでここまで肉迫してくれたのはミュー編集事務所の森田一(はじめ)さん。
 『Better Strage』誌本文のアトラクション頁では森田さんが全国の蔵をめぐりあるいて「蔵に見てきた」なる取材記事を本号で138回目。138の仕舞う文化を見てきた人。是非道具学会に入会して、道具蔵ガイドとして活躍して、収納と取り出しの道具論、研究会のヌシになってほしいと入会をすすめている。
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▲春日大社宝蔵。もとは封緘だけでOKだったのに閂錠をつけ足している。
 これもじつは日本ではシンボルでしかない(『Better Strage』誌表より)

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▲櫃(チェスト)の錠前で17世紀イタリア製

イタリア製の複雑な機械(からくり)の精巧な錠前はショーバン先生蔵書から出したもの。その蔵書とは道具学会・季刊道具学論集(ヨコ組)9号のフランス探検報告で山口が大々的に引用したトゥルネルさんの鉄器博物館に並ぶ全コレクションを収録したドーバープレスの図録集である。
 第15回学術エッセイの主旨。あけたらパッと白煙、の浦島太郎の玉手箱は組紐で結んだだけ。パンドラの箱には錠前がついていて、パンドラはその鍵(キー)を握っていた。
 封緘は、解いたり引き千切ったりすれば難なくあく。だが封緘が結んであれば無断で解いてはいけない約束だった。掟なり戒律なりがソフトな錠鍵としての規制力となっていたのであった。
 錠鍵は、いわば番人、見張り人の器械化である。西欧文明のハード依存の物質を端的に証しているのが、十字軍の騎士たちが留守中の妻の貞操を守らせるのに、鉄製の枠をはめて鍵を掛けた、貞操帯である、と文を結んでいる。
 連載の次回は箱階段─何が入っていたか、から日本人の収納整理力欠落という性格を暴露し、台所を箪笥化したシステムキッチン願望の正体を射抜いてみせようと腕をこまねいている。
# by douguology_news | 2006-04-10 16:46 | 玉手箱とパンドラの箱

扇風機の愉怪(くわい)な歴史

 あんまり口惜しいので件(くだん)の水割り論文の内容をここに叱る。
 電気扇風器の変遷に関する論文だというから面白いカモと査読を申し受けたのだが、ショーバン先生ウブすぎるな。
 今どきの審査請求論文書こうなんて動機は不純な点数稼ぎがほとんどだからねぇ─おいオイ、学会事務局がソンナこと言って!いいんだよ。点数稼ぎ論文はお断りだ。面白いもんは滅多にないこと先刻承知の筈なのに面白いカモと手を出したのは迂闊(うかつ)だった。
 その駄論文、扇風器のお面─羽根の前面をカバーするガードのデザインの変遷をひたすら集めている。それも特許と実用新案、意匠登録から100点も集めている。これは今どき座して集められる。キーボードポチポチ。あとは論文に申請者から番号まで写し取ればいい。雑誌からも広告画像を加えている。その丹念な正確さは、ショーバン先生には無理なだけに感嘆敬服する。丹念正確だけでアカデミックな業績の見栄えを磨いているのが、中味がナイのはアカデミックじゃなくてバカデミック。
 そういう単脳な人に言ってきかせて無駄とは思ったがこんなことを書いてやった。扇風器は団扇、扇子の器械化である。客を団扇で煽ぐマナーが首振りになって自分も煽ぐ都合がついた、そういう「もてなしの心」の喪失を書け。糸車に団扇を放射状につけた手廻し扇風器から変遷を書きはじめよ。首ふりから首の伸縮、香水を仕込む香る扇風器まで、手をかえ品をかえの工夫の面白さを丹念に調べて、ついにファジー空調機のまえに絶滅種に成りさがる「面白ろうてやがて悲しい生きのびるための扇風器のデザイン史」を書け。と書き送った。
 ショーバン先生がこれをやれば「扇風器の愉快な─いや愉怪(くわい)な歴史」になって、脱線転覆抱腹絶倒、だが本がくくわいの体面にかかわる、とホカデミズム先生にペケにされること請け合い。
 この全面ガード御仁ならそのキ印付き真面目(まじめ)さが活きて、じっくり可笑しい魅惑的な悩殺─いや、脳殺カクテル、脳味増ステア(掻き混ぜ)カクテルが出来上がるだろうと思うのだが、ドーモそこまで成長する気配がないなァ。また一人、どうにも面白ない先生が増えるのか。嗚(ああ)呼(ああ)、亜~亜(あ~あ)、大学にも登校拒否の時代がくるなァ。
# by douguology_news | 2006-04-09 16:45 | 扇風機の愉怪な歴史

水割り論文、ハイボール論文

 S学会に投稿された審査請求論文一件を査読する。
 論文形式は非の打ちどころ皆無の満点。内容は絶無なぁんもナイので零点。何か光るものがないかと字面を探しまわるが、100点満点で5点より出せん。
 講評欄に不満と欠点を挙げて内容を満点にする手法を懇切丁寧に書いて、折角の日曜、桜の花見も棒に振ってしまった。被害甚大、どうしてくれる!
 点数稼ぎの水割り論文だ。同様のネタをベースに、せめてハイボール論文に仕立て、新ネタを加えてレディーキラー論文、同学を酔わせる悩殺─いや悩殺カクテルに仕立てる手口を大サービスだ。ロハ(只=ただ)で教えてしまった。
# by douguology_news | 2006-04-09 16:37 | 水割り論文、ハイボール論文

源氏物語を読む部屋

 水栓があれば茶がたてられる。ここに文机(ふづくえ)ひとつ置き、源氏物語五十四帖を置いたらどうか。
 普段はくそ忙しくて、ついに一生読み通しそびれそうな大長篇。この小部屋を「源氏物語を読む部屋」にするのだ。風呂は必ず入る。風呂からあがったら浴衣になって、つづきを読んでいく。贅沢な間取りならそういう部屋の配しかたがあるだろう─自分でそうするには、まずしこたま金を稼がねばならんなァ。
 いまはまだその序の口をやってるところだ。─で、おトシは?ルセエ!!(うるせえ)。
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▲二階の洋風応接間(遠山記念館ブックレットより)

# by douguology_news | 2006-04-08 16:33 | 飛切豪邸遠山家住宅見学